子どものコロナ(オミクロン株)について【続報・令和4年1月26日】
子どものコロナ(オミクロン株)について【続報・令和4年1月26日】
- 小さい子どもは、症状が軽い
- 発熱が無く、嘔吐、下痢で見つかることもある
- 発熱すれば、半分はコロナ
- 胃腸炎も半分はコロナだと思って抗原検査すべし
- 軽症、無症状のまま軽快し、兄弟姉妹や親の発症で気が付くこともある
- 子どもは、3日休めば、軽快することがほとんど(心配しすぎない)
- 心配すべきは家族とワクチン未接種の大人
コロナ禍で私たちが得たエビデンスは、1人陽性者がいれば、4人の濃厚接触者がでるということ。
エビデンスから考えると、1人陽性者がでれば4人の濃厚接触者がいることになる。オミクロン株がほとんどを占めるといわれる現在のコロナウイルス感染症は、潜伏期間は、1~3日だ。3日あれば感染しているかどうか判明する。発症している陽性者に接触後3日経過すれば概ねPCR検査で陰性、陽性が判定できることになる。接触して翌日の検査では、恐らく陰性となり検出不能だ。運よく検出できたとしても、ウイルス量が少なく過去の感染か、これからウイルスが増えて感染するのかをPCR検査で判定することはできない。濃厚接触者は、慌てて検査しないことが鉄則だ。デルタ株時代は、濃厚接触者の検査は、接触後5日以上経過してからでないと受付しなかった。濃厚接触者の待機期間は、経過観察期間である。経過観察期間の初日に検査しても有意義とは言えない。保育園などで接触履歴が不明の場合は、まず一度検査をするのは、無症候の陽性者、キャリアを見つけるという意味で有用だ。ただ、鼻咽頭スワブ検査は、苦痛を伴う。
保育園や幼稚園で休んでいる園児が多い、学年で休園となっているなど体調不良の園児が多いなどという場合、感染性胃腸炎か、コロナの可能性が高い。オミクロン株に感染した子どもたちを複数診察したが、みな比較的元気だ。発熱していても、機嫌が悪い程度で我々医師からみて点滴や酸素投与(吸入)などすぐにでも必要だというような事例は極めて少ない。入院のデータなども今後公表されるだろうが、持病が無い子どもが入院するのはごく一部だろうと推察している。
どちらかというと、付き添いの子育てママ・パパに症状が有る場合が多い。といっても酸素飽和度が下がるほどではない。しかし、高齢者は別だ。高齢者の95%はコロナワクチン予防接種済みだが、5%程度未接種の方がいる。ワクチン未接種の高齢者の陽性判定も出ている。子育て世代で、高齢者と同居しているご家庭は十分注意が必要だ。
オミクロン株は、のど、鼻で急速に増殖するらしい(私は部位別に検体をとって比べたことは無い、鼻咽頭スワブのデータしかない)。言いたいのは、多くの元気な子どもにとってオミクロン株はただの風邪のようなものだ。のどのかぜ、おなかのカゼ程度。コロナと診断されずに保育園や幼稚園に、正に通っていた可能性が高いということだ。知らない間に、幼稚園や保育園の先生方や園バスの運転手のおじさんたちに感染しているのだろうと推察している。発症するまで数日かかるから大人たちは気が付いていないだけだ。
子どものコロナで特徴的なのは、嘔吐だ。よく考えれば、咳をしたり、のどがはれたり痛くなれば子どもは反射的に嘔吐してしまかもしれないと推察できる。不自然ではない。のどが腫れて痛ければ、食欲も落ちる。食べた時に唾液が増えるので、せき込むことが増えたり、反射的に嘔吐する可能性は十分にある。ただし、冬はノロウイルス、ロタウイルスなどによる感染性胃腸炎が流行る。令和3年12月胃腸炎が多かったがコロナはいなかった。しかし、今は半分非コロナ、半分コロナのような印象だ。前例念のため抗原検査を実施すべきだ。発症していれば、抗原検査でその場で診断可能だ。検体採取は吐物ではなく、つらいだろうが鼻咽頭スワブで適正に採取する。検体採取が適切でないと検査自体が信頼できないので小児科医に相談してほしい。
確かにデルタ株の陽性者は消化器症状(下痢、腹痛、嘔吐)があった。しかし、発熱の頻度が明らかに高かった。だから、体温測定を徹底してやってきた。オミクロン株は、熱が出ないこともある。ワクチン未接種の子どもがオミクロン株に感染しても、熱が出ない子どもが少なからずいる。熱が出ないと幼稚園や保育園に行ってしまうと予想される。結果的に、幼稚園や保育園で知らぬ間に感染が爆発的に増えていると予想している。
実例紹介。
発熱なく、お子さまが複数回嘔吐し、休日救急外来を受診した。症状に合わせて胃腸炎と診断が出て、整腸剤などが処方された。熱が無いからコロナの検査はしなかった。投薬加療して軽快した。数日後、兄弟や家族が発熱してPCR検査を受けたら陽性。元気になった子どもを濃厚接触者としてPCR検査したら、なぜか陽性。つまり、由来は嘔吐して胃腸炎と診断されたお子さまだったのだ。治療は妥当、速やかに軽快した。担当した医師は、おそらくコロナは疑わなかったのだろう。しかし、子どもの症状は改善しても家族、特に大人はそうはいかない。この家族に、持病のある方や高齢者がいたとするとぞっとする。これが、コロナの怖いところだ。逆に言うと、元気な持病のない子どもたちにとってコロナは脅威ではないのかもしれない。まだ数日間の診療経験だが、子どものコロナ患者で再診という事例も極めて少ない。つまり、最初の風邪、胃腸炎の投与のみで軽快しているのだろう。逆に、PCR陰性で咳が止まらない子どもの方がよっぽど大変だ。ぜんそくなどの持病を持つお子さまの病気が悪化した方がむしろ大変だ。持病がある子どもはリスクが高いと考え、いち早く予防接種することをお勧めする。
保育園や幼稚園では、行政や保健所のサポートが十分ではなく対応に苦慮している。嘱託医として多くの幼稚園や医療的ケア児が通う重症児デイサービスなどの感染対策を日頃から行っているが、今回の感染拡大は急速なので早めの検査で早期発見を心掛けている。できればスタッフは毎日抗原検査を実施すべきだ。埼玉県の無料検査を使うならココだと考えているが実際は難しい。規制緩和されるとよいと思う。あるいは、抗原検査キットを行政が配るのも手だが間に合わないかもしれない。
令和4年1月26日
医療法人ケアコミ 理事長
まるクリニック 院長
あい小児科PCRセンター センター長 丸山 善治郎
続報 BA.5系統について
オミクロン株感染後の発熱ついて