メニュー

検査なしに「コロナでない」とは言えないハズだ。

[2022.04.15]

新型コロナウイルス感染症の取り扱いで最も難しいのは診断だ。

昨日、TBSテレビで報道された。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye6013053.html

胃腸炎の診断、投薬加療を受けた後、PCR検査のために来院される子どもが多かったのは1月。昨年12月はコロナは稀で、胃腸炎がほとんどだった。年が明けて急に潮目が変わった。オミクロン株だったのだ。私たちはオミクロン株と判断するツール(プローブ)を得たのは2月に入ってからだ。つまり、カゼで始まらない子どものコロナが多いことに気が付いたのは今年に入ってからだ。発熱外来を持たない小児科は、検査する体制が十分でいないため症状に合わせて胃腸炎とするしかない。結果として、家の中に持ち込まれた感染力の強いオミクロン株は一気に家族内に感染しクラスター化した。1月から3月まで感染症のホットスポットは子どもたちであった。

オミクロン株の特徴は、潜伏期間が短いため一気に家族全員感染した。これもデルタ株までの特徴と大きく異なった。家の中で済めばよいが、小児科がコロナの検査をせず胃腸炎と診断している限り、保育園や幼稚園、小学校にオミクロン株が持ち込まれる。2月、3月に子どものコロナが流行した原因は診断の遅れによる隔離不全だった。

確かにコロナと診断するのは難しい。市販されている簡易検査は、疑い事例をスクリーニング(ふるいにかける)には適している。しかし、診断するのはあくまで医師だ。子どもであれば、小児科医が診断するはずだが、小児科医はコロナ診断をすることをためらうケースが目立つ。小児科医のコロナ対応が遅れたことにはいくつか原因がある。

デルタ株までは、重症化のメインは高齢者だったからだ。つまり令和3年までは子どものコロナは無視しても良いぐらいだった。子どもにとってはカゼという印象がベテラン小児科医に植え付けられた。さらに新型コロナウイルス感染症と診断したところで、投薬内容が変わらないのだ。子どもに投薬可能なコロナ薬は無い。

しかし、コロナ対応が不十分な小児科医に欠けていることがある。コロナの検査をせず、隔離できなかった子どものコロナ患者がスーパースプレッダーになっていたのだ。人災と言えば人災だろう。私はその可能性を1月のブログで指摘していたのだが、残念ながら第6波を止めることはできなかった。今回TBS様が世の中に伝えてくれたことに感謝している。

 

タイトルに診断が難しいと書いたことには理由がある。

概ね抗原定性検査(以下、抗原検査)は有効だ。特にオミクロン株になってからは特に有用でPCRの有用性に勝るのではないかと思うほどだ。

理由は、安い、早い、ちょうど良い

安い理由は、薬局で市販されている厚労省が承認している抗原検査キット販売について値段が抑制されているからだ。卸値とそう変わらない値段で売られている。ネット販売は、非承認のキットなので保証はない。可能な限り、調剤薬局などの窓口で購入するのをお勧めする。決して損はない。これは国がサポートしていることなのだと理解している。

早い理由は、15分程度で結果が解るからだ。一つ一つやらなければならないのだが、2時間以上かかるPCR検査に比べ圧倒的に早い。

そして、ちょうど良い点。

実は今問題となっているのは、令和4年に入って感染し一度軽快、治癒した後、再度発熱した方のPCR検査依頼が増えていることだ。デルタ株までのPCR検査では4~12週つまり2ヶ月経過しても微量ながらPCRで検出できることが多かった。オミクロン株でも4週程度まで微量ながらPCRで検出できることが多い。つまり、2ヶ月以内に発熱した場合、再度PCR陽性と判定される可能性があるのだ。

当院は、自院でPCR検査をしている。PCR検査はCt値という相対的な数値で測定する。Ct値が低いほどRNA量が多い、つまりウイルスが多いことになる。Ct値40未満が陽性と試薬のマニュアルに記載があるがボーダーラインの評価が難しい。特に、再発事例に関しては非常に難しい。海外ではCt値35未満を陽性とする場合もあるそうだが、最終的には臨床経過、症状、Ct値を総合的に判断して診断することになる。子どもの場合検査体制の遅れがあり、検査されずにコロナにかかっていた子どもも多いと推察される。今回の発熱の原因であるかどうか、発症初期なのか、過去の感染なのか判断が難しい場合もある。もっと問題なのは、臨床検査会社などに外部発注している場合だ。外部発注した場合の結果は、陽性、検出せず、判定不能。つまり、Ct値は通知されないのだ。今後問題となるだろう。

抗原検査は目で線を見て判断する。結構微妙だが、慣れるとある程度自信が持てるようになる。特に良いのは、ウイルス量が多いと検出頻度が高く、ウイルス量が少ないと検出頻度が下がる、つまり線が見えない、陰性と診断されることが増える。もちろん全くウイルスがいなければ抗原検査は陰性となる。注意しなければならないのは、質の悪い抗原検査キットは偽陽性がでる。偽陽性とは、ウイルスではないものにキットが反応して陽性がでること。女性に多い印象がある。その点では、厚生労働省の推奨する抗原検査キットであれば問題ないレベルなのだと考えている。私は、ロッシュ社の抗原検査キットを愛用しているが、感染拡大時期には入手できず他社のキットを使わざるを得ないことも多い。今後新しくより良い製品が市場に出回ることもあるだろう。

抗原検査キットは、ウイルス量が多ければ診断を間違えることが無いのだ。発症ごく初期や、過去の感染などウイルス量が少ない場合は検出できないが治療が必要で、隔離が必要なウイルス量が多い人は抗原検査で漏れなく判定できる。PCRと併用すれば、抗原検査でウイルス量が多い人を判定し、翌日ウイルス量が少ない人も判定可能となる。疑わしければ再検査すればよい。あい小児科では、二重の検査で診断するようになった。今後は抗原検査だけでもある程度診断できるのではないかと考えている。つまり、PCRは特別な場合のみでよさそうだ。

もう一つ大事な点がある。

検体採取も検査精度に大きくかかわる。当院は唾液検査を廃止した。鼻咽頭スワブのみで検査を実施している。鼻腔(鼻の入口)ではなく、鼻咽頭(鼻の奥で、のどの上の方)だ。つまり、かなり奥まで挿入するから、痛みを伴う。鼻出血も多い。しかし、診断制度は明らかに上がる。医療機関として最終診断を下すためには、より精度が高い検査を選択するのは当然だ。特に判定する側としては、検体採取から検査診断まで精度管理に最も注意を払っている。スクリーニングではなく、最終診断するには医療機関での検査が必要であるのは、そのような背景があるからだ。

信頼できる医療機関で、信頼できる検査の結果であれば患者様も納得できるだろう。1万人以上検査して、2000人以上陽性判定した。つまり8000人の陰性を証明したことになる。私一人でPCR検査(測定)をやったのですべて私の責任だ。その私が、陰性を証明するのが難しいと言っているのだから軽々しく「コロナでない」などと医師が口走ってはならない。

なんとなく今週は、外来の緊張感が薄くなったと感じている。油断は禁物だが、埼玉もいよいよ第6波の収束が見えてきたと言えるかもしれない。長かったので、そろそろ一休みしたい。GWは、休むことに決めていたので発熱外来も、PCR検査も一切やらないでスタッフの長期休暇取得を優先することにした。2年間休みなしに毎日働いたスタッフも、草加から離れた方がいい。私たちは十分やったと思う。後は、薬局で抗原検査を自分で買って検査して要請だったら受診すればよい。指定感染症も早くランクダウンすればよい。ただし、次に強力な変異株が来なかったらの話です。ウイルス学者たちは、デルタ株が最終形だと言っていたのだから、たぶんこれからは弱毒タイプが残るのではないかと淡い期待を持っている。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME