メニュー

鼻咽頭スワブ検査にこだわったことは正解だった。

[2022.08.11]

新型コロナウイルス感染症検査のPCR検査を試しにやめてみた。

必要ないと解ったからだ。

これまで2年間の間、最も検出率が高い鼻咽頭スワブ検査にこだわってPCR検査をやり続けた。富士レビオの抗原検査キットが出た時は、要冷蔵で使用期限が短く、コストが高く導入困難だった。徐々に良いものが出てきて、最近の物は非常に質が良い。厚労省の承認を受けたキットであれば、概ね問題ない。ただ、値段や入手方法などは課題の一つだ。

私が好きなのは、ロッシュ社製。安くて、確実だが少し反応が遅い。附属の綿棒が、フロックスワブ@なので小児向き。次はタカラバイオ社が販売しているキット。残念なのは、1個単位の包装なので50人以上外来で検査する私たちにとっては扱いにくい。さらに綿棒が短く、鼻腔用であり、鼻咽頭スワブ検査するには綿棒を別に購入しなければならない。しかし、検査精度は抜群に良い。抗原検査キットで陽性を判定するラインがクリア(細い、集中している)なので特異度、反応する物質の質が良いのだろうと予想している。さらに反応時間が短いので、2分ぐらいで概ね診断が付く。処方前に診断が付くので私は好んで使用している。640個単位での購入なので、発熱外来以外で購入するのは結構勇気がいるだろう。私たちは2週ぐらいで使い切ってしまうこともあるので、気にならない。むしろ欠品で検査できないという事が無くなったのは大きい。ロッシュは人気が高いので、感染拡大期には、発注しても手に入らない。その他の物は、高い。総合的には、ロッシュ社をお勧めする。

鼻咽頭スワブ検査にこだわったから、PCR検査が不要であるという結論にたどり着きつつある。理由は、新型コロナウイルス感染症の主たる炎症部位が、上咽頭だからだ。

様々な株の新型コロナウイルス感染症があるのだろうが、まずは鼻や口から入り、上咽頭で炎症を起こして増殖する。コロナ後遺症を診察している先生方の情報などを拝見したところ、効果的なのは上咽頭擦過療法(Bスポット療法)とのこと。つまり、上咽頭で増えたコロナウイルスの炎症が残ると、後遺症となる。上咽頭が感染の入口であると同時に、感染源となり、主病変だということだ。そして、上咽頭含む咽頭部に疾患がある慢性上咽頭炎や、扁桃炎、リンパ節炎、睡眠時無呼吸症候群や肥満、アレルギーなどの持病がある方がコロナに感染すると悪化して激しいのどの痛みと、後遺症に悩むことになるのだろう。上咽頭の背中側には、脳幹部があるので悪化すると大変危険な部位だ。

私は国内コロナ感染確認初期の頃、クラスター病棟などでの大量のスクリーニング検査以外、外来では鼻咽頭スワブ検査にこだわって14500人分の検査を行った。4500人以上陽性と判定した。延べ陽性率は、30.5%、8月のこれまでの陽性率は62.2%だ。腱鞘炎や腰痛、足のしびれがあっても毎日PCR検査のためにクリーンベンチの前で夜な夜なPCR検査を繰り返した結果だ。正確な診断のために複数回検査することもあり、日付を超えることもしばしばあった。

鼻咽頭スワブは痛いし、出血する。嫌な検査だと思われても、やり続けた。上咽頭擦過療法がコロナ後遺症に有効かもしれないという意見を聞いてふと振り返ってみた。医師や看護師が正確に鼻咽頭スワブ検査で検体を採取している場所は、上咽頭部なのだ。上咽頭スワブ検査と言っても良い。上咽頭スワブ検査にて、綿棒の先に強い刺激があれば上咽頭炎を疑う。膿や、出血が伴えば上咽頭炎が確実にあることを示唆する。たぶん耳鼻咽喉科の専門医であれば常識なのだろうが私はぴんと来なかった。注意して数日の間、綿棒の先ににじむ出血を観察したところ、全員抗体検査陽性、つまりコロナだった。抗原キットが無くても、概ね診断(上咽頭炎)が付くということだ。(コロナ感染拡大時ならコロナだろう。)検査は、PCRでも抗体検査でもそれほど変わりはない。

鼻咽頭スワブで、がんばって上咽頭から検体を取ることが最も重要だ。

PCR検査は、中国の様にスクリーニング検査などでも効果を発揮するが、時間がかかるので臨床では使いにくい。臨床的には、目の前で診断が付く方が圧倒的に良い。インフルエンザ検査でPCRを使うことは日本では稀だと思う。そろそろ、コロナも抗原検査だけに絞ってよいのではないか。PCR検査にこだわるのは、証明が欲しい生命保険会社や、無知な会社の労務関連書類作成のためだ。PCRは精度が高いが、コストや手間を考えると、もうすでにオミクロン株以降は価値が下がっている。

石の上にも3年という言葉があるが、私はまだ2年だ。最も検出率が高いと言われていた鼻咽頭スワブ検査にこだわってやってきたおかげで、正しく診断できた事例が多かったと振り返っている。陽性者も4500人を超えた。幸い、ラゲブリオ投与を行った事例は少ない。

しかし、もうPCR検査が要らないと思っている。ラゲブリオなどの治療薬が必要な方は、鼻咽頭スワブ検査による抗原検査で十分診断が付く。PCR検査の結果を待っているより、抗原検査で15分で判定して処方しないと、次の日診断して処方では、効果的ではない。PCR検査の3日後に診断しているようでは、ラゲブリオ投与基準の5日以内に投与できない可能性が高い。PCR検査が必要だとすれば、無症状あるはごく軽症、濃厚接触者などで潜伏期間が疑わしい方への検査だ。そういった方々は抗原検査キットでは検出困難だ。抗原検査はあくまで発熱外来で有用である。発熱が無い接触者、軽症者(のどがイガイガする、咳がいつもよりでるなど)を診断するには感度の高いPCR検査が圧倒的に良い。それは、発熱外来ではなく、無料検査場でやればよいということだ。つまり、医療ひっ迫、外来受診困難の解消には無料PCR検査等事業も重要だという事だ。そちらはPCR検査の方がむしろ有用だ。

当院周辺は、当院も含め新型コロナウイルスワクチン接種を積極的に推進してきたので高齢者で未接種者などは稀だ。つまり、重症化する人が圧倒的に少ない。一方、そもそも人生の最終段階と言える年齢の方は、何があっても危篤になってしまうから感染症が原因かもしれないが、ほかの病気や老衰でも死を迎える。死亡者数を数えるときには、年齢別、既往歴の数字を明らかにすべきだ。死に至る病を抱えたコロナ感染者の死因については、注視しなくてはならない。私は大学院時代、解剖学教室に留学していたぐらいなので組織病理や死因について普通の医師よりこだわりを持っている。医療崩壊が叫ばれるが、できればワクチン未接種の人のデータを別にして、ワクチン接種した方々の死亡者数が急激に増えたら医療崩壊と言った方が良いだろう。病気は発症してから対応するのではなく、予防が肝心だ。予防接種政策を積極的に進めた草加市長、八潮市長の決断に敬意を表したい。予防接種は正に市町村の首長の決断が肝心だった。

コロナ診断においてPCR検査をやめても、鼻咽頭スワブはやめません。更に言うと、医療機関は唾液PCR検査で高い検査料を取るのを今すぐやめて、鼻咽頭スワブで抗体検査すると良い。こんなことを言うと医師から嫌われそうだが、4500人を診断した医師からの伝言だと思ってもらえれば最高だ。全自動PCR装置を全額補助金で今頃購入している診療所は、恥ずかしいと思わないか?抗原キットで十分だ。

そして後遺症に悩む方はまず、Bスポット療法ができる耳鼻科に相談すると良いのではないか。ずいぶん長いブログを書いたが、今の正直な気持ちだ。発熱外来は、鼻咽頭スワブで抗原検査ということが日本中に広まると最高だな。PCR検査は健康保険適応を外して、自治体が無料検査として残せばよい。私が健康保険の制度設計に携われるなら、PCR検査を健康保険の適応から外して医療費を削減することを提案する。こんなこと言うと、全国のコロナ対応している医療機関から激怒されそうだけど、これが本心だ。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME