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コロナ後の発熱は、非常に難しい。【続報3・オミクロン株】

[2022.05.24]

あい小児科でも、まるクリニックでもオミクロン株に感染した子どもたちが再度受診する機会が増えてきた。令和4年の1月に急速にオミクロン株が流行し、草加八潮地域の幼稚園、保育園、小学校などで感染爆発した。ほとんどの施設で感染が確認され、休園、休校が続発した。特に2月の発熱外来は、陽性率が7割を超えていた。ほとんどコロナだった。

オミクロン株の流行から2ヶ月経過し、4月中旬ぐらいから新規コロナ感染者数は減少し、GW前には陽性率は2割程度まで落ちた。最近の発熱外来は、コロナの方が圧倒的に少ない。つまり、コロナ以外のカゼがほとんどだ。

4月以降、新規コロナ患者の特徴はワクチン未接種者。つまり、小さな子ども、大人の一部とやはり多いのは3回目未接種者。2回接種の方々は未接種と変わりなく感染しているような印象を持っている。早めに3回目の予防接種を行うことを強くお勧めする。ただし、2回接種していれば感染はするかもしれないが、重症化しない傾向はある。3回目接種を控えている人はいま直ぐ予約した方がよい。4回目接種を秋までに終わらせなければ、今度の冬に流行するときにワクチンの効果が期待できなくなる可能性が高い。今3回目を終えないと、秋までに4回目接種が回ってこない可能性が高い。予防接種は計画的に。

あい小児科PCRセンターで今問題になっているのは、コロナ後の発熱だ。子どもが発熱することはよくあるが、今年に入ってコロナに感染した子どもが再度発熱して受診する機会が増えている。では、何が問題なのか?

あい小児科PCRセンターにおけるPCR検査では、デルタ株以前のコロナ患者は発症後8週程度陽性となった。治癒証明目的でPCR検査を行うともれなく陽性となった。したがって、治癒証明としての陰性証明検査は禁止していた。鼻咽頭粘膜に感染性のあるウイルスがいなくても、ウイルスのかけら(RNA断片)が残っていれば、感度の良いPCR検査は陽性となるからだ。当院の検査系は非常に感度が高いと判断していた。オミクロン株に対しては、データが無いのは言うまでもない。数少ない事例ではあるが、オミクロン株は感染するのも早いしPCR検査で陰性化するのも早いという印象を持っている。

PCR検査では、最終的に吸光度を計測する。そしてCt値という値で最終的に評価する。Ct値が低いほどRNA量(ウイルス量)が多い。Ct値15~25は、ウイルス量が多い状態、26~35はウイルス量が少ない少なくなっている状態、35から40はウイルスのRNA断片が少数存在するという状態だと想定している。Ct値40以上は、標的RNAが検出できない、「検出せず」という結果となる。ボーダーラインの場合、検出不能もしくは再検査としている。一方、抗原定性検査(いわゆる抗原検査として販売されているキットなど)は、Ct値でいうと35未満で陽性となる。Ct値35以上のウイルス量が少ない場合は陰性となることが多い。抗原定性検査は、感度がやや落ちる。抗原定性検査も慣れてくると、陽性のバンドの濃さ、コントロールのバンドとの比較である程度ウイルス量が想像できるが定量的ではない。

コロナ後の子どもたちの発熱外来におけるPCR検査で起こっている現象。

  • 令和4年にコロナ感染した子どもが、再感染することもある。
  • 1~2カ月前にコロナ感染した子どもは、Ct値が高く検出され偽陽性判定となることがある。それは再感染ではなく、以前のウイルスの残骸が残っている可能性があるので臨床的に慎重に判断すべきである。
  • 濃厚接触者、発症初期などウイルス量が少ない場合、原検査が陰性であってもPCR検査では高いCt値として検出できることがある。

 

 抗原定性検査は、15分で判定できるので迅速、簡便。しかし、ウイルス量が多くないと検出できない。逆にPCR検査は、時間がかかるが、感度がよいので偽陽性含めて陽性が増える。オミクロン株の感染爆発後のPCR検査では、偽陽性が少なからず増えている。偽陽性と解れば、PCR陽性でも既存の感染ということで感染症の発生届けは出さない。デルタ株以前は、子どもの感染が話題にならなかったため、検査実績が少なかった。しかし、令和4年後のオミクロン感染は、子どもに蔓延した。蔓延後、感度の良いPCR検査は、以前の感染症の残骸を検出している可能性がある。PCR検査、抗原定性検査ともに特徴があり、検査をすればよいというわけではない。現在に至っても、PCR検査を自院で実施している医療機関は稀だ。ほとんどが臨床検査会社に外部委託している。外部委託されたPCR検査の結果は、陽性、検出せず、判定不能の3通り。Ct値を明らかにしていないところがほとんどだ。つまり、偽陽性となるCt値が高い事例があるが、陽性という結果で判定されているのだろう。注意が必要だ。Ct値で評価する場合は、検体採取から、測定までの一連の検査が一定の質を担保されることが要求される。あい小児科は、原則全例鼻咽頭スワブ検査だ。検体採取後、同日内にPCR検査(測定)を実施してきた。検査が一定の質を担保できているからこそ、Ct値で話ができる。

 

 いずれにせよ最終的には、医師が診断する。あい小児科の様に自院でPCR検査をしていればCt値が明らかなので、臨床症状、臨床経過と抗原検査結果、Ct値を総合的に判断できる。そうでない発熱外来では、偽陽性の判定が増えている可能性がある。感染拡大後の感染症検査は慎重に判定することが求められる。更に言うと、検査せず、知らず知らずに2月ごろ感染していた子どもたちは、春になって初めてPCR検査を受けてCt値が高い状態の陽性者として判定されてしまうこともある。感染した既往が無ければ、あるいは気が付いていない、検査していない場合なども新規の感染者と判断される可能性がある。特に小さいお子様や保育園、幼稚園に通う子どもたちは発熱することが珍しくない。毎回検査で大変かもしれないが、クラスターになってからでは遅い。検査するにしても、判定が難しくなってきていることを周知すべきだ。白か、黒かだけでなく、灰色の判定は再検査するのが妥当だ。再検査の数値の変化で最終判断を下すのが妥当だろう。

 

 臨床的に大事なことは、①コロナワクチン予防接種歴、特に回数と最終接種日、②陽性者や発熱者との接触歴、そして③発熱、咽頭痛、頭痛などの症状、それに加え④コロナ感染の既往だ。発熱外来受診の際は、医師に必ず正しく伝えてほしい。

 

ウイズコロナ時代のPCR検査は、Ct値を考慮したうえで医師が診断すべきだ。

 

https://hhp.or.jp/column/%e5%ad%90%e3%81%a9%e3%82%82%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%ad%e3%83%8a%ef%bc%88%e3%82%aa%e3%83%9f%e3%82%af%e3%83%ad%e3%83%b3%e6%a0%aa%ef%bc%89%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e3%80%90%e7%b6%9a%e5%a0%b1

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