オミクロン後の感染症対策について
令和4年は、オミクロン株が日本中に蔓延した。感染力が驚くほど強く、昨年冬に予想していたような状況が現実となった。インフルエンザが流行る時期にコロナが流行り子どもから家庭、大人そして高齢者と感染が伝播するという流れ。令和3年の正月明けも感染が急増したが、広がりは小さかった。今年は全国に感染が拡大し首都圏以外も他人事ではない経験をしたはずだ。埼玉県は東京同様蔓延した。
2年ほど感染症対策を実施してきたが、奇跡的に当法人のすべてのスタッフが一度もコロナに感染していない。子育てママが多い職場にしては奇跡的だ。そろそろ毎日抗原検査をしなくてもよいのではないかと考えている所だ。当院が特別な対応をしたわけではなく、一つ一つ厚労省が開示しているマニュアル通りに実行したまでだ。徹底的に実行する。感染対策はそれしかない。
では、これからどうするのか?
予想されることは以下の通り。
感染者数は急速に減少する。
行動制限が取れ、人流増加に伴い接触リスクが増す。
ひとたびウイルスが混入すれば、瞬く間にクラスター化する。
ウイルスを排除できれば、マスクも不要になる。
では、対策は如何に。
- ワクチン予防接種
- 検査
- 環境整備
注意しなければならないのは、蔓延防止策が終了すると感染するリスクが高くても制限されない。つまり、一定のリスクが個人や社会に負荷される。そのリスクに対しての自衛的な感染対策だ。自衛とは、個人と学校や会社など団体で方法が異なる。私のブログを読んでくれる皆様には、1万人以上のPCR検査を自分で測定した医師のアドバイスを伝えられれば幸いだ。
個人でできることは、予防接種だ。
予防接種に関しては、忽那先生のヤフー記事が秀逸だ。
過去に新型コロナに感染した人は、ワクチンをいつ接種すべきか?(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース
次に検査。
PCR検査は高額なので、抗原検査が実用的だ。
発熱外来で全例抗原検査、PCR検査をやってきたが、抗原検査とPCR検査の結果は9割程度一致する。ウイルス数が少ない場合は、抗原検査陰性、PCR検査陽性というパターンが1割程度。抗原検査陽性でPCR陰性といういわゆる偽陽性は1%前後と稀。つまり、発熱していた場合は抗原検査でほぼ診断がつく。
大問題なのは、抗原検査は感度が鈍いため偽陰性(ウイルス量が少なく抗原検査は陰性だがPCRでは検出できるレベル)がでる。無症状、これから発熱するような濃厚接触者などの検査で偽陰性が多くみられる。正確には偽陰性ではなく感染しているが発症前ということなので判断が難しいことが解っている。その点PCR検査は感度が高いため、鼻咽頭粘膜にウイルスがいれば検出できる。
感染暴露して発症前の人も見つけようと検査の感度を上げるならばPCR検査が良い。しかし、唾液は検出率が落ちるのでやるなら鼻咽頭スワブでのPCR検査だ。しかし、検査には痛みが伴う。唾液は痛くもかゆくもないが、飲食した後などは検出率が低下する。唾液で検査するなら、起床時、歯磨きをする前に唾液を採取することが大事だ。PCR検査の欠点は、検査の費用が高いことだ。
検査についての比較は、既にブログに記載している。
抗原検査は、とっても有用だ。 | あい小児科 (hhp.or.jp)
|
抗原定性検査 |
PCR |
検出感度 |
良好 |
微量でも検出可能 |
判定時間 |
10~15分 |
4時間(当院) |
判定方法 |
線を目で見る |
定量的(Ct値) |
発症前、発症初期 |
- |
-、あるいは判定不能 |
発症中(発熱) |
陽性(くっきり見える) |
検出 |
解熱後、軽快後 |
-(うっすら見えることもある) |
検出(4週から12週) |
では、いかにして検査するか?
当法人では、平時は月二回のPCR検査。感染拡大時には、週1回、週2回、毎日と検査頻度を上げて対応している。毎日検査ならPCRは高額なので抗原検査が良い。今年は二カ月間毎日抗原検査を実施した。20人×3,000円(検査キット、消費税)×60日=360万円の支出だが、休診するリスクが減るのなら致し方ない支出だ。幸い、埼玉県無料PCR等検査事業を活用しできる地元の職員が多いため実際の支出は10分の1で済んだ。無料検査は、感染が収束したら適応外となる。つまり、4月以降は自分で支払うしかない。予防のコストは事業所や個人の負担となる。岸田総理は抗原検査を確保したと昨日会見で発言したが使い道までは発言していない。学校や保育所に速やかに配備すべきだ。抗原検査キットは、厚労省が指定するもの以外は信用しない方が良い。信頼性に欠ける抗原検査がたくさんあるのは事実だ。ある老人ホームで抗原検査陽性だから検査してほしいと依頼があった数名に関して、当院の抗原検査、PCR検査とも陰性ということがあった。検査やるなら信頼できる検査を選ぶ必要がある。値段の安いPCR検査を選ぶのであれば、唾液は朝一番の唾液をしっかり採取することが重要。
そして大事なのは環境整備をどこまで継続するかだ。
飲食店や高齢者施設などでもテーブルに敷居が当たり前になった。政府から補助がでる間に設備投資したことを無駄にしない方が良い。当院で一番良かったのは、HEPAフィルター付き空気清浄機を配備できたことだ。結核病棟や手術室でしか見たことなかった設備が私の診察室に配備され、活用できる。咳をしても空調設備がウイルスを吸い込んでくれるのでかなり安心だ。そして、今は花粉対策にもとても効果的だ。安いものは20万円ぐらいの器械もあるので会議室や事務室に設備投資することをお勧めする。感染対策の備品は、継続して使用した方が良い。マスク、手袋しかりだ。完全にウイルスが撲滅されるまで、感染対策は続く。手袋もコンドームも同じだ。恋愛や結婚、妊活は最初から感染リスクが伴う。妊婦の定期健診で同時に感染症検査を実施しているのはリスクがあるからだ。リスクのない生活などない。妊活の前に、子宮頸がんワクチン予防接種が先だというとは言うまでもない。恋愛の前に、ワクチンだ。ワクチン接種せずに、恋愛なんて先進国でありえないことを日本人はもう少し考えた方が良いだろう。緩和ケアを12年やっていたが、20代、30代女性の看取りといえば子宮頸がんを思い出す。同じ若い方の癌でも骨肉腫やユーイング肉腫は予防できない。子宮頸がんはワクチンで予防できるものがある。ワクチンで予防できるなら痛くても、お金がかかっても予防接種すべきだと思う。肝転移、肺転移、脊椎転移して寝たきりになる女性を最期まで看取っていた医師としては、予防接種をためらう理由が理解できない。
コロナが少なくなると、私のブログも書くことが無くなるのでそろそろ終わりが近づいている気がする。毎日遅くまでPCR測定をするのもそろそろ終わりにしたい。