【味覚、嗅覚障害について】
新型コロナウイルス感染症で特徴的な味覚障害、嗅覚障害がある。150人以上の感染患者さんの診断を確定してきたが、後遺症に関してはあまり深い知識が無い。ウイルス感染は一過性であり、隔離、入院等で当院での診察も遮断される。つまり、症状を追うことはできていない。
経験談で言えば、昨年3月の都内クラスターで感染した方が5~6月ぐらいに来院されることがあった。しかし、その後の通院加療は無い。つまり、後遺症の方の診察は2~3ヶ月が限度だった。
先日、貴重な体験をした。昨年1月に感染したと思われる方の話を聞けた。無論まだ新型コロナウイルス感染症が日本で確認され始めた時期であり、その方は診断がついていない。話を聴いていただけで今なら直ちにPCR検査をして診断を確定できる。技術は進歩したが、治療はあまり進歩していない。
コロナの味覚障害、嗅覚障害は特徴的だ。正直、問診で診断できるぐらい確信を持ってPCR検査に臨んでいる。味覚、嗅覚の突然の消失。この二つが一番特徴的だ。発熱はせいぜい高くても10%程度の陽性率。味覚障害、嗅覚障害が揃えばほぼ100%診断が付く。しかし、この二つに治療法が無い。困ったものです。
更に悪いことには、1年3ヶ月経過した方の話によると、未だに全快、元に戻っていないという。水痘ウイルスが原因である帯状疱疹後痛という病気があるが、それに似ている。軽快する人もいれば、痛みが残り慢性疼痛となり通院している方々を整形外科時代、在宅医療で長く診療していた。コロナの味覚障害、嗅覚障害は回復するものの、3ヶ月で半分から7割、一年経っても残存する場合があるということが解った。ただ、その方はPCR検査をしていないので厳密には新型コロナ感染症患者とは言えない。科学的な根拠にはならない。
急に突然味や臭いの無い世界に入り込んだようになるそうです。全く臭いが解らなくなったところから、手の届く範囲、1メーター、部屋の中、概ね全快という段階を踏んで臭いが解ってくることで回復を実感するそうです。最初は、鼻の近くに引き寄せてようやくうっすら臭いが解るそうです。臭いが解った時はすごくうれしい感じになるとのこと。味も同じような感じです。回復するスピードは、恐らく皆さん違うのではないかと想像しています。そういったデータもこれから蓄積されてくるでしょう。
診断に有用と考えている問診があるのですが、ブログに書くと、それを見て診察に臨む人がでると予想されます。診断に影響するので控えます。概ねメディアに出ていることと変わりはありません。普段の味覚を10とするとどれぐらいかというのは、非常に有効な目安となります。ただ、味覚のスケーリングは非常に難しい。味覚障害、感覚障害に共通するのは、鈍麻、低下、消失することです。過敏になる、別の臭いになることは今までの経験上ありません。カレーの味がいつもと違うという方は、陰性でした。嫌な臭いが無くなったという方は陽性でしたね。つまりある日突然、トイレでうんちの臭いが全くしなくなったらぜひPCR検査を受けてください。参考にしてください。恐らく陽性の方の味覚障害であれば、カレーの味がしないという訴えになるでしょう。何しろ急に、味や臭いが鈍くなる、解らなくなるというのが共通します。今、花粉症や黄砂による影響が強く出ております。アレルギーとの鑑別には、発熱やこれまでのアレルギー歴が診断に役立ちます。最終的には、医師の診察に加えPCR検査が必要になります。耳鼻咽喉科で診断が付かなかった患者様の中に、コロナの陽性者がいることもあるでしょう。職場や、仕事、人間関係などのストレスで、食欲がなくなることもあるでしょう。コロナの場合、突然味や臭いの無い世界に入り込んだようになるそうです。勿論、コロナに感染した方全員に味覚、嗅覚障害が出る訳でもないようです。
昨年1月に感染したと思われる方の話を聞けたことで、このブログを書くことを決めました。突然味や臭いの無い世界に入り込んだようになるそうです。
もし、そんな症状の方がいらっしゃれば、どうぞ午前中に外来受診してください。