ALSに対するラジカット®療法
あい小児科では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方々のエダラボン(ラジカット®)療法を訪問診療で支援しています。ALSに対する医療的ケアの一つとしてエダラボン療法を取り入れました。ALSの進行に伴う症状の変化に対応した医療的ケアを提供することを心がけております。治療を希望される方に対する一つの方法がエダラボン療法です。
神経内科専門医療機関で開始されるエダラボン療法は、4週1クールで最初の2週間で10日間点滴を行います。その後の2週間は休薬します。定期的に腎機能検査を含めて血液検査を実施します。そんな治療を継続する場合、点滴が多くなりますのでCVポート(中心静脈ルートとリザーバー)の手術を病院で受けてから在宅へ移行することをお勧めしています。長い期間点滴療法を実施しますので、末梢点滴で継続するのは困難であり、化学療法で用いられるCVポートがあると安心して在宅でエダラボン療法を行うことができます。
ALSに対する在宅医療・医療的ケアは、
- 胃ろう
- 訪問リハビリテーション
- 吸引、持続吸引
- 非侵襲的人工呼吸器
- 気管切開
- 人工呼吸器、携帯用人工呼吸器
- 介護ベッド、エアマット
- 意思伝達装置
- 呼吸苦に対する緩和療法(医療用麻薬を含む)
- 排泄ケア(経尿道的膀胱留置カテーテル、下剤、浣腸)
これまでは、病態の進行に伴う症状に対する医療的ケアが中心でしたが内服薬に加え、エダラボン点滴療法が適応になり在宅医療にも紹介が来るようになり実践しています。診断や、治療開始は神経内科の専門医療機関で行われますので必ず紹介状、診療情報提供書が必要です。連携ができれば、エダラボン療法はいつでも開始できる体制を整えております。
ALSの在宅療養は、非常に多くのケアが必要になります。家族の方だけで完結できるものではございません。医療、介護、福祉の制度をフル活用して「生きる技」すべてを使う必要がございます。筋力低下は徐々に、確実に進みます。今できることが、数か月後できなくなります。診療の中でそのための備えを御提案いたします。対応が遅くなることが非常に多く、大変苦慮しております。筋力低下の進行は、早い場合も遅い場合もございます。ただ、今を基準に準備しているとその計画は早晩破綻します。それは間違いない事実です。必ず筋力が弱くなります。ALSは、最終的に意思決定以外何もできなくなり、最後は意思疎通もできなくなります。身体的なケアが必要になる病気です。正しい病気の理解と、病気の進行を受け入れて「生きるためにどんな選択をするのか」について相談しながら進めてまいります。どんな医師が診察しても治らない病気です。主治医を変えたところで治りません。そのことを御承知の上で御相談ください。厳しく聞こえるという方は、考え方を改めたほうが良いでしょう。呼吸器をつけなかったALSの方は全員死にました。確実に呼吸ができなくなります。変えがたい事実です。100%の死亡率でございます。当たり前ですが、必ず死にます。死ぬ前に、動けなくなります。もちろん、食事も、着替えも、トイレも自分ではできません。家で死にたい、最後まで家で過ごしたいという方は、生きる全ての事を家族の方やケアスタッフに代行するように依頼、頼まなくてはなりません。頼まれた方は、24時間、365日休むことができません。ALSのケアは大変ですが、誠にやりがいがございます。在宅でお過ごしになったALSの方を10名以上看取ってきました。最後の最期は入院させていただいたこともございます。ALSのケアにかかわる事で得た経験は、私たちの財産でもあります。ALSの現実を受け止めて、かかりつけ医としてできることを粛々と時を過ごします。呼吸苦に対して、医療用の麻薬を使うことも保険診療で可能です。ALSの呼吸苦に対して、私が麻薬を導入した実績もございます。治療法がない方へのケアが、緩和ケアです。人生の最終段階のケアを担う医師があい小児科の医師です。緩和ケアを希望するALSの方の御相談を承っております。主治医として死ぬまで、看取りまで診察する方及びそのご家族や介護者の方々へ対応になります。繰り返しになりますが、ALSは進行すればするほど、時間が経てば経つほどケアする量、介護量が増え、ケアする人の負担は増えます。増えたからと言って医師にそれを改善する治療を施すことはできません。耐え難い苦しみ、理不尽な苦しみを抱えた方に対して緩和ケアが行われます。緩和するというのは、延命とは逆の方向の治療、ケアであることも多々あります。私たちの在宅医療24時間対応は、24時間死亡診断書を作成できるという診療体制であり、救命、救急は行っておりません。救命を希望される方は、お断りしております。
ALSと診断されたら、即胃ろうを作り筋力低下を予防する栄養補給とリハビリを行うことが最も良い方法であることは専門医療機関で推奨されております。筋力が落ちる原因は神経ですから、神経の機能が落ちる前に筋力(特に筋肉の量)を最大限大きく、多くしておくことが後の筋力に大きく影響するからでございます。人工呼吸器も早めに導入することが推奨されております。筋力が落ちてくると胸壁の動きが悪くなります。呼吸をつかさどる肺を含む胸郭が小さく、硬くなってから人工呼吸器をつかっても呼吸機能は思ったほど上がりません。先に先に対応することが「生きる」ために必要だと考えて活動しています。ALSの筋力が回復するというエビデンスは、世界中探してもどこにもないのです。最も正確なエビデンスは、ALSの筋力低下は進行するということです。もちろん、ALSの根本的な治療ができればそれを受けられる医療機関に速やかに紹介させていただきます。今のところ、そのような報告はありません。
エダラボン療法は、早期の症状の方の進行を緩徐にする効果がありますが、中等度、重度の病期では効果がありません。つまり、進行期の病態では治療法がありません。治療法はありませんが、必要なケアは山ほどございます。多くのケアが必要となれば、入院、入所、ショートステイの利用などの「住まい替え」を検討することも提案いたします。
詳しくは、電話で御相談ください。